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  • 執筆者の写真Yuko NITTA

ロレアルによるタカミの買収



フランスのロレアルが日本のドクターズブランド「タカミ」を買収するとの報道がありました。


タカミといえば、青いボトルが目印で、デパートの化粧品売り場などでもよく見かけますね。実は私も、最近タカミのリップクリームがとてもよいときき、使ってみようと思っていました。


今回はこの報道をもとに「買収」とは何かを簡単に説明してみたいと思います。

 

仏ロレアルは23日、日本の中堅化粧品メーカー、タカミ(東京・中央)を買収すると発表した。買収額は非公表で、2021年1月に手続きを完了する。タカミは美容皮膚科クリニックが母体で、「タカミスキンピール」(税別4800円)など角質をケアするスキンケア商品に強みを持つ。19年度の売上高は68億円。ロレアルが日本のブランドを買収するのは02年の「シュウウエムラ」に続き2件目。


2020年12月23日日経新聞デジタルより引用

 

まず、前提として、会社は株主のものですので、買収するというのは、その会社の株式を取得するということです。会社は社長のものではないかと思った方もいるかもしれませんが、違います。社長は、株主から、その会社の経営を任されている人であり、株主は、社長を選ぶこともクビにすることもできます。中小企業(多くの美容系の会社もこれにあたります)では、株主=社長のことも多いので、株主と社長の違いをあまり意識しないかもしれませんが、法律上、株主と社長は全く別のものです。


次に、「買収」ときくと、映画にもなった「ハゲタカ」のような、どんどん株式が買い集められ、無理やり会社が買われてしまうようなイメージを持つ方もいるかもしれませんが、今回のケースはこれとは異なります。


買収には、敵対的買収と友好的買収の2種類があります(両方とも法律用語ではなく、一般用語です。)前者は、会社の同意なく会社の株式が取得されるケース、後者は、会社の同意のもと会社の株式が取得されるケースです。今回のロレアルとタカミは後者の友好的買収であり、二社が話し合いを重ねた結果、結婚することに決めた、というようなものです。


実際、両社は今回の買収について、以下のようなコメントを出しています。


 

シリル・シャピュイ(Cyril Chapuy)=ロレアル リュクス プレジデントは「『タカミ』ブランドを当社のポートフォリオに迎えることができ、大変うれしく思う。アジアにおける『タカミ』の高い定評は、その品質の高さに匹敵する。同社のプレステージビューティトリートメントの専門知識とオムニチャネルの販売網は、ロレアルリュクスのブランドポートフォリオにおいて極めて補完的だ」と話す。一方岡村雄嗣タカミ社長兼オーナーは「美容皮膚科タカミクリニックのノウハウから生まれた私たちの製品は、日本の消費者の高い要求水準を満たす品質と効能を提供している。日本での21年間の成長を経て、世界をリードするビューティカンパニーであるロレアルグループの一員となり、その科学的・国際的な専門知識を得てブランドをさらに発展させていく」とコメント。


2020年12月23日WWDオンラインより引用


 

まさに、結婚の記者発表のようではないですか?買収とは、事業拡大の有効な手段です。ロレアルは、タカミと一緒になることで、タカミの強い日本や中国のマーケットに進出しやすくなりますし、タカミにとっても、国際的なブランドとして、アジア以外の消費者にもその存在をアピールしやすくなるでしょう。


私も弁護士として買収をアシストすることが多くありますが、そのたびに、買収は会社同士の結婚だなと感じます。お互いに後から後悔したくないので、将来のビジョンについてよく話し合いますし、よく相手の調査をしますし、綿密に条件を詰めます。離婚は結婚の何倍も大変だとよく言いますが、これは会社にとっても同じなので、一定の時間をかけて(ただし、だらだらしすぎてお互いの気持ちが冷めないうちに)進めていきます。


買収はロレアルやタカミのような有名な会社だけのものではありません。中小規模の美容の会社でも、目玉商品や、ユニークなアイディアがあれば、大手企業に注目されて、結婚のオファーが来ることもあります。オファーは受けても受けなくてもよいのですが、オファーを受けることは株式を売却することなので、株主(創業者の方が多いと思います)は、株式売却の対価として、一定以上の現金を受け取ることができるメリットがあります。


中小規模の美容の会社さんは、このような話が舞い込んでくるような魅力的な会社を作る、ということを一つの目標にされてもよいと思います。


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