自社が意匠登録しているデザインと似たデザインの商品を他社が販売している場合、どうし
たらいいでしょうか。この場合 意匠権侵害に当たる場合には、損害賠償請求や商品の製造販売の差止請求することができます 。
意匠権とは何かについては、本ブログの「美容業界にとって意匠は重要です」 をご覧ください 。
意匠権侵害といえるためには、意匠の形態が同一または類似している必要があります 。
意匠の形態が同一または類似かは以下の4つのステップで判定します。
(1) 基本的構成態様と具体的 構成態様 を認定する
(2) 要部を認定する
(3) 共通点と差異点 を認定する
(4) 意匠を全体として観察する
これについては、美容フェイスマスク についての 有名な裁判例(大阪地裁平成29年2月7日判決)があるのでそれを例に見てみましょう 。原告は被告が原告の意匠権を侵害していると主張し、フェイスマスクの製造販売の差止や損害賠償などを求めました。
出典:大阪地裁平成29年2月7日判決、意匠登録大1453869号
左側が原告のフェイスマスク、右側が被告のフェイスマスクです。似ていますか?似ているけれども、フェイスマスクはそもそもこういう形なので・・・というのが多くの皆さんの感想ではないかと思います。
以下が裁判所の行った認定です(分かりやすく要約しています)。
(1) 基本的構成態様と具体的構成態様を認定する
基本的構成態様:人の顔面の形状に合わせて立体に成形されたマスクであり、目口耳に開口部があり鼻に隆起と切れ込みがある
具体的構成態様:耳や口がハート型であること、目が先のとがった横長楕円形であること、鼻の切り込み線が鼻梁を構成していることなど
(2) 要部を認定する
基本的構成要素はフェイスマスクにおいて通常考えられる形態なので新規でない。
具体的構成態様のうち、鼻部の具体的な形状、耳掛け部周辺の具体的形状が需要者の注意を最も惹く部分であり、これらが本件意匠の要部になる。
(3) 共通点と差異点を認定する
共通点
顔の形のマスクで目、口、耳に開口部があり鼻に切れ込みがある
差異点
輪郭について、被告意匠は額部の頂部がわずかに凹、原告意匠は全体に凸の曲線
耳と口の形について、被告意匠はハート型、原告意匠は楕円形
目の形について、被告意匠は両はじが尖っている、原告意匠は横型円形
鼻の形について、被告意匠は明確な鼻梁がある、原告意匠は明確が鼻梁がない
(4) 意匠を全体として観察する
被告意匠は鼻筋の通った引き締まった顔立ち、原告意匠はのっぺりとした印象
以上より、両意匠は類似しない。
裁判例は、デザインが類似しているか否かかなり分析的に判断していることが分かると思います。このように分析すると、一見似ているけど、よく見ると口や耳の形など違いは色々ありますし、消費者から見て区別できないほどの類似ではないことが納得できます。
実際に自社が意匠登録しているデザインと似たデザインの商品を他社が販売しているのを見つけた場合は、弁護士に相談し、意匠権侵害の有無と取り得る対策についてのアドバイスをもらってください。その時もこのような判断の仕方の基本が分かっていると、弁護士の話もより分かりやすくなると思います 。
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