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  • 執筆者の写真Yuko NITTA

美容業界にとって「意匠」は重要です


「意匠」とは、物品の形状、模様もしくは色彩またはこれらの結合、建築物の形状又は画像であって、視覚を通じて美感を起こさせるものをいいます(意匠法2条1項)。


意匠については登録制度があり、特許庁に出願をして登録されると、最長25年の保護を受けることができます。保護が受けられるというのは、端的にいうと、登録されたデザインを用いて商品製造などをできるのは権利者だけとなり、他社が登録されたデザインを模倣した場合などは、差し止めや損害賠償請求をできるということです。

引用 意匠登録第1654781号(D1654781)


これは、マキアージュの口紅で使用されている意匠であると思われます。


引用 マキアージュ公式サイト https://maquillage.shiseido.co.jp/item/lips/


この意匠登録により、株式会社資生堂以外が、マキアージュの口紅ケースと類似した口紅ケースの口紅を製造販売することはできなくなります。この口紅ケースのように、ブランドにとって重要なデザインで、模倣されては困るというときには、意匠登録をすべきといえます。

 

では、どのようなデザインであれば、意匠登録できるのでしょうか? 意匠登録の要件は以下のとおりです。

1 工業上利用できる意匠であること

⇒工業上同一のものを複数量産し得るものである必要があります。純粋美術や自然物など量産できないものはこれにあたりません。


2 今までにない新しい意匠であること(新規性)

⇒出願前にそれと同一又は類似の意匠が存在しないことです。


3 容易に創作することができたものでないこと(創作非容易性)

⇒誰にでも思い付くような、容易に創作できる意匠は、意匠登録を受けることができません。


4 先に出願された意匠の一部と同一又は類似でないこと

⇒先に出願され、登録になった意匠の一部と同一又は類似する意匠は新しい意匠を創作したものとはならないため、意匠登録を受けることができません。意匠は、先に創作した人ではなく、先に出願した人が優先します。


5 意匠登録を受けることができない意匠でないこと(不登録事由)

⇒以下に挙げるものは、公益的な見地から意匠登録を受けることができません。


 ①公序良俗を害するおそれがある意匠

 ②他人の業務に係る物品、建築又は画像と混同を生ずるおそれがある意匠

 ③物品の機能を確保するために不可欠な形状若しくは建築物の用途にとって不可欠な形状

  のみからなる意匠又は画像の用途にとって不可欠な表示のみからなる意匠


6 意匠ごとに出願していること

⇒意匠出願は意匠ごとにする必要があります。



以上の要件のうち、私の経験上、美容関連製品の意匠でよく問題になるのは、2の新規性と、3の創作非容易性です。


2の新規性については、自分が登録を希望する意匠と同じ又は類似するものがないかをリサーチする必要があります。化粧品の容器、ブラシの形状など、世の中には既に多くの意匠が登録されていますので、似たような意匠がないかを確認することは、意匠出願の第一歩です。まずご自身でリサーチしてみたい場合には、独立行政法人工業所有権情報・研修館の、特許情報プラットホームというウェブサイトで検索することができます。リサーチの結果既に似たものがあった場合には、類似していると判断されないように、こちらの意匠を変更するなどして対処します。


3の創造非容易性については、他の意匠を寄せ集めただけのような場合、配置や大きさを変えただけのような場合に否定されてしまいます。これについても、検討の結果、創造非容易性がないと思われるものについては、出願前に、登録しようとする意匠を変更することが多いです。

 

最後に、出願はご自身でもできますが、上記の要件に該当するかの検討や、意匠を記載した図面の作成が必要なので、弁護士や弁理士に依頼すると安心であると思います。


意匠登録を上手く利用して、大切なデザインを守るようにしましょう。


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