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執筆者の写真Yuko NITTA

アートメイクは医行為です



アートメイクは 医行為(医師法第17条)に該当します。

医師法第17条は「医師でなければ、医業をなしてはならない。」と定めています。そして、ここにいう「医業」とは、「医行為」を反復継続する意思をもって行うことであると解釈されています。


アートメイクが医行為に該当する根拠は、有名な厚労省の回答です。

厚労省は、「医師免許のないエステサロン従業員が、来店した患者に問診する等して眉、アイラインの形をアイブロウペンシルで整えた後、患者を施術台に寝かせ、電動式のアートマシンに縫い針用の針を取りつけたアートメイク器具を使用して、針先に色素をつけながら、皮膚の表面に墨等の色素を入れる行為をした後、患部をアイスゲールで冷やし、更に鎮静効果のあるキシロカイン等の薬剤、化膿止め薬剤を患部に塗布している。」という事案について、「ご照会の行為を業として行えば医業に該当する。」と回答しています(平成12年6月9日 医事第59号「医師法上の疑義について」 )。


したがって、アートメイクは医行為であり、医師でなければ行うことができません。なお、看護師は、医師の指示があれば、診療機械の使用や医薬品の授与をすることが認められているため(いわゆる相対的医行為、保助看法第37条)、医師の指示のもと、看護師がアートメイクの補助を行うことは可能であると考えられます。


なお、最高裁で彫り師の行うタトゥーは医行為でないと判断されましたが(最高裁令和2年9月16日決定)、この判断を踏まえても、アートメイクが医行為であるという解釈に変化はないと考えます。詳しくは「タトゥー事件最高裁決定とアートメイク」をご覧ください。


美容サロンなどで医師免許を持たずにアートメイクを施術するのは違法行為であり、逮捕者も多く出ています。アートメイクを、ネイルやまつげエクステンションと同列に扱うのは完全に誤りですので気を付けましょう。法的には、アートメイクは医師法や薬機法の対象となる、非常に規制が厳しい分野であると理解しましょう。


また、アートメイクの医療機関での施術を啓蒙するために、医師や看護師らにより、日本メディカルアートメイク協会も立ち上がっていますので、今後の活動に期待したいと思います。アートメイクは、眉毛やアイラインの構築はもちろんのこと、手術による傷跡、火傷跡の見た目の改善や、乳房再建後の乳輪の構築なども行う、社会的ニーズが高い分野ですので、安全で専門性の高い技術が広まっていくとよいなと思います。


 

関連して、アートメイクに使用する器具やマシンを、海外から輸入し販売することも薬機法違反になります。薬機法に基づいて承認を受けた医療機器でなければ日本で販売することは許されていません。また、承認を受けた医療機器でも販売には医療機器の分類に応じて製造販売許可が必要です。アートメイク機器の輸入販売についても、逮捕者が出ていますので、気を付けましょう。

 

医療関連機器として届け出が必要な針を使って皮膚に色素を注入して眉などを描く「アートメーク」の機器を無許可で販売したとして、警視庁生活環境課は医薬品医療機器法違反の疑いで、東京都品川区西品川の会社役員、三森英孝容疑者(76)と、新宿区新宿の会社役員、米井敏代容疑者(60)を逮捕した。ともに容疑を認めている。


2017年2月2日産経ニュース「アートメイク機器を無許可で販売 会社役員ら逮捕」より引用

 

アートメイクを行う医療機関では、通常、医師が法律に基づき外国から器具を個人輸入しており、このような違法な業者から器具を購入することはありません。アートメイク器具は医療機器であり、ネイル用器具などと同列に取り扱うことはできませんので、この点も併せて押さえておきましょう。


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