top of page
  • 執筆者の写真Yuko NITTA

海外展開の際に外国で商標登録すべきか



自社のサロンブランドを海外で展開したい方、自社の化粧品などを海外で販売したい方などから、ブランド名などを海外でも商標登録したほうがよいか聞かれることがあります。


私の回答は「した方がよい。特に商標権の冒認が多い国は早めの対応が必要。」です。


商標権は国ごと


まず、前提として、商標権というのは国ごとの権利です。よって、日本でブランド名を商標登録していたとしても、国外では保護されません。中国で保護されるためには中国での登録、アメリカで保護されるためにはアメリカでの登録が必要です。


商標の冒認という問題


残念ながら、日本の会社の名前や商品名、更に日本の地名などが、主に中国などの外国で第三者によって登録されてしまう、という問題が起こっています。これを、商標の冒認といいます。例えば都道府県でいうと、中国では、2020年12月時点で、「京都」など、31の県名、中国等の外国企業・個人による商標登録されてしまっています。そして「東京」など、37の都道府県名が出願中となっています。


私のクライアントでも、中国でビジネスをするために、会社名や商品名を、中国で商標登録をしようとしたところ、同一の商標が既に存在するとして登録を拒否されて冒認が発覚するというケースがいくつかありました。


外国で開催される美容の見本市に自社商品を出展し、それをきっかけに商標の冒認登録がされてしまうというケースもあります。見本市に出るだけで盗まれてしまうというのは非常に悲しい話ですが、良い商品であればあるほど、悪意のある人にとっては魅力的なターゲットですので、注意が必要です。


商標の冒認はどう確認するか


自社の商標が冒認登録されていないかは、中国商標局の発行する商標公報を閲覧するか、中国商標網というインターネットの検索サイトで確認できます。検索サイトは中国語ですが、下記の特許庁のホームページに翻訳や検索方法が載っていますので、これを見ながらであればご自身でも検索できます。もちろん国際業務を取り扱っている弁護士や弁理士に依頼すれば検索してもらえます。


特許庁:「中国・台湾で日本の地名や自身の商標が他者により出願登録された場合の総合的支援策について 」


自社の社名や商品名が冒認されていたらどうするか


中国での商標登録は、出願後審査がなされ、登録が妥当と判断されると初歩査定という広告がなされ、初歩査定後3カ月以内に異議申し立てがなければ、認可登録がなされます。したがって、初歩査定期間中であれば、異議申し立てをするというのが一番よい方法です。既に認可登録されてしまっている場合には、商標の無効宣告を請求する必要があります。もしくは、長く使用されていない商標であれば3年間使用していないということを理由に商標登録の取り消しを請求することもできます。これは、中国国内の手続きになりますので、中国の弁護士を利用し、手続きを進めていくことになります。自社の社名や商品名に指名度があることの立証や、権利者の悪意の立証など、いかに証拠を集めるかがポイントになることが多いです。


商標権買取交渉


上記以外に、権利者との間で商標権買取の交渉をすることもあり得ます。もっとも、法外な価格を要求されることも多いので注意が必要です。実務上は、買取交渉をして価格で折り合いがつかないので無効宣言の請求に進む、ということもあります。

もしくは、当然ではありますが、商標の新規登録を試みることは可能です。登録したい商標と、既に登録されてしまっている商標が類似しない可能性があるようなケースでは、既に登録されている商標の有効性を争うだけでなく、新規の登録も同時に試みることができます。す。


海外進出の場合は商標登録を!


自社のサロンブランドを海外で展開したい方、自社の化粧品などを海外で販売したい方は、ターゲットとする国で、日本同様に商標登録をするべきです。特に、商標の冒認の多い国では、早め早めに、具体的には、海外展開の企画段階で、見本市などに出展する前に登録申請をしていただくのが理想的です。外国で商標登録というと大変そうに思われるかもしれませんが、マドリッド・プロトコルという、日本の特許庁を窓口とし、日本での商標出願又は商標登録を基礎にして、一度に複数の外国(締約国・加盟国)へ出願することができる制度があり、数多く利用されています。


bottom of page