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  • 執筆者の写真Yuko NITTA

ニュース分析:花王とカネボウのブランド事業部統合について



先日日経新聞に花王とカネボウに関する興味深い記事がありました。

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花王によるカネボウ化粧品の買収から15年。花王は1月、別々だった双方の化粧品のブランド事業部をひそかに統合した。縦割りで無駄な根回しが残っていたため、再編で真の「融合」を目指す。訪日客で好調だった化粧品は新型コロナで一変し、従来のマーケティングも通用しない。グループの不協和音を見過ごす余裕はなくなった。


日本経済新聞 2021年2月26日

「花王とカネボウ、15年越しの「融合」

「本丸」化粧品ブランド戦略統合 不協和音、コロナで限界 より引用


 

2005年、カネボウは過去5年間に渡り2000億円超の粉飾決算をしていたことが発覚し、2006年、花王がカネボウの化粧品部門を買収しました。既に15年前の話で、若い方はそんなことあったの?という方もいるかもしれません。カネボウと花王はもともと別の会社で、それぞれの会社に「ブランド事業部門」「物流部門」「研究部門」などがあったわけですが、買収後、これらの部門は徐々に一つの会社として統合されていきました。しかし「ブランド事業部」という、通常化粧品会社では最も重要な、マーケティング、広告、ブランド戦略などを決める部門は統合されておらず、今般ようやく統合されることになった、というのがこのニュースです。


日経新聞の報道によると、一つの会社であるにも関わらず、花王のプリマヴィスタとカネボウのコフレドールは、ターゲット層の似た中価格帯ブランドなので、ライバル意識が強く、新商品の広告の内容や時期を探りあっており、資生堂などの社外のライバルに対する対応がおざなりになっていたそうです。


このように聞くと、なんでそんなに15年間も別々にやっていたの、会社内で競争してどうするの、効率が悪すぎる、などと思われる方が多く、これは非常にごもっともな意見です。


しかしながら、ここに、M&Aの一つの難しさがあります。M&Aをするときは、M&A成立までのプロセスだけにフォーカスしがちで、M&Aができればめでたしめでたし、となりがちなのですが、実は「M&A後の統合」というのは、とても大きな課題です。全く別の会社が突然一つになったとき、それぞれの会社で仕事の進め方も、大事にする価値も異なりますので、本当の意味で統合するの簡単でないのです。これは、カネボウと花王のような大企業同士のM&Aでも同じですが、中小の美容系企業のM&Aでも同じことです。


以前、「美容業界に特化したM&Aサービス「M&Aビューティー」」という記事で、M&Aは企業同士の結婚であるとお話ししましたが、買収後の統合についても、結婚をイメージしていただくと、分かりやすいと思います。結婚式が終わりいざ一緒に生活し始めると、価値観が合わない、生活習慣が違う、洗濯物の畳み方が気に食わない、などということはよくあります。結婚前に相手の人となりを査定したつもりでも、一緒に生活をしてみてはじめて分かることもありますし、「文化」「価値観」のような事前の測定が難しいものの違いが一緒になった後に問題として際立つこともあります。


このニュースをとおして、M&AにはこのようなM&A後の統合の問題があることを知っていただければと思います。


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