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  • 執筆者の写真Yuko NITTA

サロン経営者の皆様、契約書の確認していますか?



弁護士になってしみじみ思うのは、契約というのは、生活の隅々まで関係しているということです。アパートを借りるのは賃貸借契約、インターネットショッピングは売買契約、病院で診てもらうのは診療契約、エアコンの取付けは工事請負契約など、意識はしなくても、私たちは日々数々の契約を締結しています。


思い起こしてみれば、私が弁護士になろうと思ったのは、大学で美術史を専攻していた当時、ボランティアをしていた画廊で、絵の売買代金が支払ってもらえないというトラブルを目の当たりにしたからでした。芸術の世界に契約が関係しているとは思いもしなかったのですが、絵の売り買いも売買という契約だったのです。私も他の画廊のスタッフも、契約の意味をきちんと理解していなかったために、代金がもらえないときにどうしたらいいのか分からず、途方に暮れるしかありませんでした。


美容サロンを経営している方の中にも、自分のビジネスがどのように契約と関係しているのか実感が湧かない方もいると思います。私もかつてそうだったのでよく分かります。そこで、今回は、サロンビジネスではこういう契約を締結している、ということと、契約をきちんと確認しないとこういうトラブルがありうる、という事例を紹介したいと思います。



サロン店舗用の物件を借りる

→賃貸借契約

敷金の大半をクリーニング代という名目で取られた

賃料が安いので契約したら定期借家で退去しなければいけなくなった


店舗の内装工事を依頼する

→工事請負契約

内装工事のデザインがお願いしていたものと違った

すぐに壁紙が剥がれたのでやり直しを依頼したが断られた


商材を仕入れる

→売買契約

代金を支払ったのに商材が届かない

購入した商材の質が悪いので交換を依頼したが断られた


スタッフを雇用する

→雇用契約

多額の残業代を請求された

サロンの繁忙期に有休をとりたいと言われた


お客様に施術をする

→施術契約

未成年に対する施術をしたら親に返金を求められた

まつげエクステンションで目が腫れたとクレームが来た


ホットペッパーに掲載する

→サービス利用契約

契約をやめようとしたら自動で更新されたと言われた

新型コロナウイルスの影響で売り上げが下がったのでランクダウンしたいが断られた


特定のブランド・チェーンの加盟店になる

→フランチャイズ契約

やめる際に多額の違約金を請求された

独自に商材を仕入れたら契約違反と言われ契約解除された


上記のようなトラブルを避けるためには、契約書をきちんと確認する必要があります。

「契約書をきちんと確認する」とは、まずは自分で一文一文読むことです。その上で、弁護士に契約書の確認を依頼できればベストです。弁護士は、どこがあなたに不利なのかを伝え、文言の修正案を提案してくれます。コスト的に弁護士に依頼できない場合には、せめて、自分で読んで理解できなかった文章について、経営者の先輩など知っていそうな人に聞いたり(契約相手に聞いてもいいですが、正しく説明してくれる保証はありません)、インターネットで調べましょう。ただし、インターネット上には、不正確な情報も多いので、弁護士の書いた記事など、なるべく信頼できそうな情報を探す必要はあります。また、いずれにしても、専門家のアドバイスでないというリスクはあります。


最後にコストについて少しだけアドバイスさせてください。契約書の確認を弁護士に依頼し、コストをかけるというのは抵抗があるかもしれません。限られた資金は、なるべくマーケティングなどに回したいという気持ちはよく分かります。しかしながら、契約書の確認は、おおよそ数万円ですが、契約書の確認を怠ったことでトラブルになった場合には、数十万円以上のコストがかかります(価格は弁護士や案件の内容にもよります)。毎年多少のお金をかけて健康診断をして病気にならないようにしたほうが、あるとき急に大きな病気になり入院費や手術費がかかるより結果的に安いということと似ています。また、トラブルが起こるとその対応に時間がかかり、精神的にも大きな負担になりますので、金銭面以外のコストもばかになりません。私も「最初に契約書をきちんとしておけば、この裁判にならなかったのにな・・・」と思ったケースは数えきれないくらいあります。クライアント方は「勉強代だと思うようにして、これからは契約書をきちんと作ります」と仰ってくださいますが、できたら高い勉強代は支払わない方がいいですよね。このように考えると、多少コストがかかっても、弁護士に契約書を確認してもらい安心して経営する方が合理的ですし、皆さんにおすすめしています。

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