自社の化粧品を開発するため、休業中のサロンを復活するためなどに必要な資金を集めるため、クラウドファンディングをしてみたいという方もいるのではないでしょうか。
クラウドファンディングとは、新規・成長企業と資金提供者をインターネット経由で結び付け多数の資金提供者から少額ずつ資金を集める仕組みです。クラウドファンディングには、購入型、寄付型、株式投資型など色々な類型があるのですが、今回は、おそらく美容業界の皆様が一番使う頻度が多い購入型について説明したいと思います。
購入型のクラウドファンディングとは、資金提供の対価として商品やサービスが提供される類型のクラウドファンディングです 。例えば、化粧品の開発製造を目的とするプロジェクトの場合、調達した資金によって製品化された化粧品を対価として提供します。5000円を資金提供してもらい、その対価に、化粧水と乳液を送るようなイメージです。
日本最大のクラウドファンディングサイトであるCAMPFIREでは、ビューティ・ヘルスケアのカテゴリー中、「美容」で検索すると、546件ものプロジェクトが出てきます(2021年2月8日時点)。
出典:CAMPFIRE
購入型クラウドファンディングを行う際に法律的に注意いただきたいのは、以下の点です。
1 クラウドファンディング業者の利用規約等のルールをよく読む
美容系の会社Aが、クラウドファンディング業者Bのプラットフォームを利用し資金を集める場合、A社とB社はプラットフォームの利用に関する契約を締結することになります。インターネットで利用を申し込むだけなので、契約を締結しているイメージが持ちにくいかもしれませんが、契約を締結しています。この契約のルールは、B社が定めた利用規約ですので、利用規約をきちんと読みましょう。例えば、CAMPFIREの場合、利用規約は以下のリンクのようになっています。
2 美容系の会社Aは特定商取引法の規制対象となる
購入型のクラウドファンディングでは、美容系の会社A社がインターネット上でB社のプラットフォームを通じて化粧品を販売していると考えられます。これはインターネットショッピングと同様に特定商取引上の「通信販売」にあたります。よって、A社は特定商取引法に基づき一定の広告の表示義務を負います(事業者の情報、販売価格、商品の引き渡し時期等の表示)。また誇大広告等の禁止等の規制も課されることになります 。
3 美容系の会社Aは契約不適合責任等を負うことになる
購入型のクラウドファンディングでは、売主は A社でありB社ではありません。A社は、売主としての義務を全て負いますので、仮に、支援者に送った化粧品に不具合があった場合には、代替品を送る必要がありますし、支援者は弊社に対して損害賠償を請求したり契約を解除したりもできます 。
4 美容系の会社Aと支援者でトラブルになってもB社は助けてくれない
購入型のクラウドファンディングでは 売主はA社、買主は支援者であり、売買契約はA社と支援者の間に成立します。したがって、仮に、A社と支援者でトラブルになった場合は、A社と支援者で解決する必要があります。B社はA社と支援者が出会う場所を提供しているだけですので、紛争には原則関わりません。実際、クラウドファンディング業者の利用規約には、必ずこのことは明記されています。例えば、CAMPFIREの利用規約では、以下のように書かれています。
第33条(免責)
2項 本サービスに関連して、プロジェクトオーナーと支援者の間を含む、ユーザー同士の間で生じたトラブルに関しては、ユーザーの責任において処理および解決するものとし、CAMPFIREはかかる事項について一切責任を負わないものとします。
出典:CAMPFIRE利用規約
5 美容系の会社Aは個人情報取扱業者となる
これは当たり前のことですが、商品の発送のため、A社は支援者から住所、氏名等の個人情報を提供されることとなりますので、これは自社で厳重に管理する必要があります。
以上、注意点をご理解いただき、スムーズなクラウドファンディングを実践していただければ、幸いです。
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