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  • 執筆者の写真Yuko NITTA

スタッフ採用面接で聞いてよいことと悪いこと


サロンのスタッフ採用面接について、 腰痛持ちか聞いてよいか、メンタルヘルス上の問題があるか聞いてよいか、妊娠しているか聞いてよいか、などと相談されることがあります 。今回は、採用面接で聞いてよいこと悪いことについて説明したいと思います 。


まず、関連する法律の紹介です。


職業安定法第5条の4は、募集採用等の目的の達成に必要な範囲内で求職者等の個人情報を収集しなければならないとしています 。また、この条文の解釈を示す厚生労働省の指針(※)は①人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項、②思想及び信条、③労働組合への加入状況は、収集を禁止し、例外的に、特別な職業上の必要性が存在することその他業務の目的の達成に必要不可欠であって、収集目的を示して本人から収集する場合にだけ、収集することを認めています。


また、個人情報保護法は、病歴その他の要配慮情報の取得については原則として本人の同意を得る必要があるとしています(同法第17条2項)


(※)「職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者、募集情報等提供事業を行う者、労働者供給事業者、労働者供給を受けようとする者等が 均等待遇、労働条件等の明示、求職者等の個人情報の取扱い、職業紹介事業 者の責務、募集内容の的確な表示、労働者の募集を行う者等の責務、労働者 供給事業者の責務等に関して適切に対処するための指針」 (平成 11 年労働省告示第 141 号、 最終改正 令和2年厚生労働省告示第 160 号)


以上を前提として、以下の事例を考えてみましょう。

 

1 腰痛があるかなどの健康状態を尋ねてよいか?


健康状態については上記の指針に収集してはいけない情報として挙げられているわけではなく、また、支障なくサロンワークを行えるかどうかに関係する重要な事項なので、腰痛があるか等の健康状態について質問することは、職業安定法や上記指針に反するものではなく、許されます。


2 うつ病になったことがあるか尋ねてよいか?


うつ病などの精神疾患については、上記指針のその他社会的差別の原因となるおそれのある事項」に該当する可能性があります。 最近は、うつ病の経験についてオープンに話す方も増え 、精神疾患に対する社会的認識は変わってきているとは思いますが 、それでも否定的な印象を持たれることがまだあるのも事実ですので、これに該当すると考えます。もっとも、うつ病を発症している場合には、集中してサロンワークを行うことが難しかったり、お客様とのコミュニケーションに支障が生じることもあるでしょう。したがって、サロンスタッフとしての採用の場合には、特別な職業上の必要性が存在することその他業務の目的の達成に必要不可欠なものとして、うつ病の経験の有無について本人に尋ねることは、例外的に認められると考えます。もっとも、質問が許されるのは、当時の症状や回復した時期、サロンワークへの影響の有無など、採否の判断に合理的に必要な範囲のことだけであり、発症の原因など、詳細な内容に立ち入って聞くことは避けるべきと考えます。また、本人の同意を得た収集のみが認められますので、本人が回答を拒否した場合には、それ以上追及することはできません 。また、本人が過去に勤務していたサロンに連絡し情報収集することなども、個人情報保護法に違反しますのでできません 。


3 妊娠しているか尋ねてよいか?


妊娠の有無は 、上記の指針に収集してはいけない情報として挙げられているわけではなく、また、支障なくサロンワークを行えるかどうかに関係する重要な事項なので、質問することは 、職業安定法や上記指針に反するものではなく、許されると考えます。なお、仮に、妊娠していないという回答を得て、内定したあと妊娠が判明した場合でも、内定の取り消しはできないと考えられています。男女雇用機会均等法第9条3項で、女性の妊娠を理由として解雇その他不利益な取扱いを することは禁止されているからです 。


以上、採用面接の参考になれば幸いです。

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