• Yuko NITTA

ブックレビュー「コスメティック 林真理子」


化粧品業界の裏側とそこで働く30代ワークホリック女子の生き様を描く痛快お仕事ストーリー

美容に関係する小説でおすすめをと聞かれたら一番にあげるのは「コスメティック」です。


まず、美容業界の裏側に関するリアルな描写が面白く読み始めたら止まりません。林真理子氏は美容好きとしても知られていますが、相当なリサーチをしたのではないでしょうか。私たちの多くは、ファッション雑誌やメイク雑誌を見ながら、このキレイな写真の裏側には、商業的なこととか権力争いとかドロドロした何かがあるのだろうな・・・となんとなく感じていると思いますが、その「ドロドロした何か」の一端がここにはっきり描かれています。ただ、それが嫌らしい感じではなく、むしろ潔く、美容もビジネスだと正しく理解されてくれます。


次に、主人公である沙美の生き様もリアル。男性との付き合いや別れなど恋愛的な要素もありますが、あくまでも基本の軸は自分≒仕事。最初のころに沙美が発する「息切れするぐらい働きたいの。」という台詞のとおり夢中になって働き、ふとした瞬間に仕事にむなしくなり、でもまた働く、という働く女性なら経験したことがあるであろう生活が描かれています。小説を読んでいるというよりも、友達の人生談をききながら、「うんうん、それすごく分かる」「私もそういうことあったよ」と共感するかんじと言った方が正しいかもしれません。


最後に、これは1999年初版の小説なので、彼氏が自宅の電話に電話してくる、海外旅行にいった相手とは頻繁に連絡が取れないなど、今となっては相当懐かしい時代が描かれており、そうだ昔はこうだったと驚かされます。しかしながら、女性を活躍させるという建前の会社で実際は重要な仕事を任せられない、女は野心を持つ必要はないといわれる、女は仕事で100%幸せになる必要はなく結婚して子供を育ててトータルで100%幸せになればいいといわれる、など、沙美が感じる不条理は現在でもそのまま通用するものです。テクノロジーの進化のスピードと、ジェンダーの固定観念の変化の遅さとを比較すると、もっとなんとかしないという気持ちになります。