花王はルナソルの商品廃棄量を3分の1に減らそうとしているそうです。
花王は売れ残り商品の廃棄を減らす。主力の化粧品ブランドで、ネットでの先行販売で需要を予測する取り組みを始めた。化粧品は流行の移り変わりが早く、一般に生産量の1~2割程度が売れ残り処分される。新たに投入する商品は点数を半減し、廃棄量を3分の1に抑える。環境負荷を減らすESG(環境、社会、企業統治)重視の流れが一段と強まりそうだ。
2021年3月4日 日経新聞
「花王、廃棄減へ新商品半分 主力化粧品、70に絞る 売れ残り処分量3分の1」より引用
ここでのキーワードは、ESGです。
ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字を取ったもので、企業が社会的な課題(例えば化粧品の廃棄量が多いこと)にどう取り組んでいくかという姿勢を指します。
企業が環境や社会のために良いことをしましょうという動きは昔からあって、CSR(Corporate Social Responsibility)と呼ばれていました。これは、企業の社会に対するボランティアというようなイメージでした。
これに対してESGは、投資家へのアピールという側面が強いものです。現在、投資家は、どの企業に投資をするかを決める際に、その企業がどれだけ環境・社会・企業統治への配慮をしっかりしているかを考慮して投資先を決めるので、これをしっかりしていることで、資金を集めやすくなるのです。そういう意味で、ESGのいう社会的責任は、やっていればプラス評価されるかも、というような緩いものではなく、やっていないと投資家にそっぽをむかれてしまい資金が集められないという、クリティカルなものであると、私は考えています。
以前、香港のローファームで研修していた際、私の主な仕事は、ESGレポートという、会社が投資家に対して自社のESGに対する取り組みを詳細に説明する報告書をレビューすることでした。当時、日本の中小企業でESGに対する取り組みを発信するケースはほとんどなかったので(今でも多くはありません)、投資家の意識が強い香港はやはり違うなと、非常に感銘を受けたのを覚えています。
また、ESGは取引先を選ぶときの基準になることもあります。実際、引用した日経新聞でも、ルナソルのブランドマネージャーの方の「高級化粧品の顧客は環境意識が高い人が増えており、環境配慮への対応が必要になっている。」という発言が取り上げられていました。つまり、ルナソルを含む高価格帯の化粧品のユーザーは、そのブランドの環境配慮への姿勢を見極めた上で、十分に対応していると思えば買うし、不十分で自分の価値観と合わないと思えば買わない、という判断をしているということです。
みなさまのブランドでも、お客様はこういう視点を持ち始めているということを意識して、廃棄量やパッケージをコントロールし、それを上手くPRしていただくとよいのではないかと思います。
日本でも、大企業はもちろん中小企業でも、ESGはこれからの時代のキーワードの一つになりますので、覚えておいてください。
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