先日「サロン経営者の皆様、契約書の確認していますか?」という記事で、美容サロンが事業をしていく上で締結する可能性の高い契約を網羅的に紹介させていただきました。今回は、美容皮膚科、美容形成外科など、美容クリニック向けに、美容クリニックではこういう契約を締結することが多い、ということと、契約をきちんと確認しないとこういうトラブルがありうる、という事例を紹介したいと思います。
美容クリニックに特徴的なのは、使用する医療機器が高額なことが多いのでこれらの売買や輸入に関するトラブルが多いこと、医師・看護師・スタッフなどの複数の人材を採用するので雇用に関するトラブルが起こりやすいこと、患者様の効果に対する期待が高く施術費用も一定高額なので患者様からのクレームが起こりやすいことなどです。したがって、契約はとても大事になってきます。
クリニック用の物件を借りる
→賃貸借契約
敷金の大半をクリーニング代という名目で取られた
賃料が安いので契約したら定期借家で退去しなければいけなくなった
クリニックの内装工事を依頼する
→工事請負契約
内装工事のデザインがお願いしていたものと違った
すぐに壁紙が剥がれたのでやり直しを依頼したが断られた
医療機器等を仕入れる
→売買契約
売買契約の直後によりよい機械を見つけたのでキャンセルしたいができない
購入した直後、機械に不具合があり修理を依頼したいが有料と言われた
医療機器を個人輸入する
→医療機器の輸入代行会社との契約
予想より多い手数料を請求された
機械が故障した際のアフターサービスがない
クリニックでサプリや化粧品等の物販を行う
→売買契約
仕入先から約束通り商品が納入されない
購入者から返品を要求される
医師、看護師、スタッフを採用する
→雇用契約・委任契約
多額の残業代を請求された
クリニックの繁忙期に有休をとりたいと言われた
医師等の人材紹介サービスを利用する
→人材紹介契約
予想より多い手数料を請求される
勤務開始後すぐに辞めてしまったが手数料が返還されない
診療・施術を行う
→診療契約
未成年に対する整形手術をしたら親に返金を求められた
診療代金の未回収が発生した
患者からのクレームが来た
クリニックの広告をする
→広告会社との業務委託契約
効果がないのでやめたいがやめられない
HPの写真等を意図しない形で使用される
クリニックを経営されているドクターの方は診療等で忙しいので、細かい契約のことはどうしても後回しになってしまうこともあるようです。しかしながら、無用なトラブルを避けて医療に専念していただくためにも、契約書はきちんと確認していただければと思います。
「契約書をきちんと確認する」とは、まずは自分で一文一文読むことです。その上で、弁護士に契約書の確認を依頼できればベストです。弁護士は、どこがクリニックに不利なのかを伝え、文言の修正案を提案してくれます。ドクターの方は忙しいので、契約書の確認に長々と自分の時間をかけるよりも、弁護士に依頼した方が、コストパフォーマンスがよいことが多いのではないかと思います。また、クリニックの場合は、顧問弁護士を持つということもお勧めできると思っています。私も、美容クリニックを含む複数の病院の顧問弁護士として業務に携わっていますが、クリニックの場合は、患者様からのクレーム、カルテ等の開示請求や従業員とのトラブルなど、日常的に法的対応が必要になることが多いので、都度弁護士を探すよりは、顧問弁護士がいる方が、安心でかつコストパフォーマンスがよいことも多いです。また、契約とは少し話がそれますが、医療法人の理事会や社員総会の対応、医療法人とMS法人の関係の整理、M&Aや相続など、クリニックに関わる法律問題は多いので、その意味でも、顧問弁護士の利便性はあると考えます。
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