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特定商取引法上の表記:他社のものを単にコピペするのはやめましょう

執筆者の写真: Yuko NITTAYuko NITTA



自社の商品をインターネットで直接消費者に販売したい、オンラインヨガ教室をやりたい、オンラインサロンを作りたいなど、インターネット上で商品を販売したりサービスを提供する場合、利用規約等をインターネットサイト上に準備する必要があります。具体的には、少なくとも、①利用規約、②プライバシーポリシー、③特定商取引法上の表記を作成します。①利用規約には、インターネットサイトの利用に関するルールや商品売買・サービス提供に関するルールを記載します。②プライバシーポリシーには、個人情報の取扱いに関するルールを記載します。③特定商取引法上の表記には、特定商取引法という法律で、記載が義務付けられている事項を記載します。


 

特定商取引法上の表記については、同業他社のウェブサイトの表記を単純にコピペして終わりにしてしまう方も多いようです。


しかしながら、これはよろしくありません。同業他社の表記が法律的に正しいとは限りませんし(弁護士の目から見るとネット上には不十分なものも溢れています)、例えば、返品特約をどのようにどのように規定するかなどは、各社の判断に基づくものなので、他社の条件が自社の条件と同じとは限らないからです。契約書を作成するときに、ネットで拾ってきたものを使うことが危険なのと似ています。


※返品特約に関する詳しい解説はオンラインショッピングで返品不可にしたいときにすべきこと」もご参照ください。


 

そもそも、特定商取引法上の表記は何故必要なのでしょうか。


インターネットショッピングを含む通信販売は、広告は消費者にとっての唯一の情報獲得手段なので、事業者は一定の事項を広告に表示しなければならないことになています。オンラインショッピングサイトは、TVCMやチラシなどと違い「広告」ではないと思うかもしれませんが、ウェブサイト上い商品を掲載し購入申し込みを誘引するという性質上、法律上は広告に該当します。したがって、特定商取引法上の表記は、通信販売の広告に関するルールの一つとして、必要なのです。


次に、特定商取引法上の表記に記載すべき事項は以下のとおりです。美容関係のECサイトを作成する際に誤りやすいポイントだけ簡単に解説します。各事項の詳しい説明などは、消費者庁「特定商取引法ガイド」に詳しく記載がありますので、参考にしてください。


①販売価格(役務の対価)(送料についても表示が必要)

➡対価は、商品ごとに異なるので「各商品ページに表示する価格」などとしてOKです。送料は、「実費」などではなく、明確に記載する必要があります。


②代金(対価)の支払い時期、方法

➡全ての支払方法を記載する必要があります。可能な方法のうち一部だけ書くのはNGです。


③商品の引渡時期(権利の移転時期、役務の提供時期)

➡「クレジット決済承認後に発送」は不明確なのでNGです。「クレジット決済承認後●日以内に発送」または「クレジット決済承認後●速やかに発送」などと明確に記載する必要があります。


④商品若しくは特定権利の売買契約の申込みの撤回又は売買契約の解除に関する事項(その特約がある場合はその内容)

➡返品特約がある場合は、内容を明確に記載します。例えば「商品に欠陥がある場合を除き、返品には応じません」などです。返品を認めないつもりなのに、記載していないケースが散見されるので、注意してください。


⑤事業者の氏名(名称)、住所、電話番号


⑥事業者が法人であって、電子情報処理組織を利用する方法により広告をする場合には、当該販売業者等代表者または通信販売に関する業務の責任者の氏名


⑦申込みの有効期限があるときには、その期限


⑧販売価格、送料等以外に購入者等が負担すべき金銭があるときには、その内容およびその額

➡代金引換手数料、キャンセル料などはこれに該当します。


⑨商品に隠れた瑕疵がある場合に、販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容

➡化粧品の場合など、商品に不具合があった場合の返品・交換期間を3か月などと、民法より短く設定する場合には、記載する必要があります。正しく記載をしていないケースが散見されるので、注意してください。


⑩いわゆるソフトウェアに関する取引である場合には、そのソフトウェアの動作環境


⑪商品の売買契約を2回以上継続して締結する必要があるときは、その旨及び販売条件


⑫商品の販売数量の制限等、特別な販売条件(役務提供条件)があるときには、その内容


⑬請求によりカタログ等を別途送付する場合、それが有料であるときには、その金額


⑭電子メールによる商業広告を送る場合には、事業者の電子メールアドレス


上記のうち、特に混乱しやすいのは、④商品若しくは特定権利の売買契約の申込みの撤回又は売買契約の解除に関する事項(その特約がある場合はその内容)⑨商品に隠れた瑕疵がある場合に、販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容です。


④は返品特約、つまり、商品に不具合がなくても購入後一定期間は返品ができるか否か、⑨は商品に隠れた不具合があった場合の対応です。この2つは全く別のものであり、それぞれ自社で、どのような条件にしたいのかを検討し、記載する必要があります。


 

最後に、特定商取引法上の表記は、インターネットショッピングを利用するお客様との間の契約にはならない可能性があることに注意して下さい。特定商取引法上の表記は、公法上の表示義務を履行することを主目的とするものなので、契約の内容とすることを目的として準備したものではないと解される可能性もあります(「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」令和2年8月 経済産業省 I-2-1-1(2)①(ii) 26頁参照)したがって、特定商取引法上の表記だけでなく、利用規約をしっかりと作成することをおすすめしています。

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