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  • 執筆者の写真Yuko NITTA

未成年の美容整形、親の同意は必要?


これは既にご存知の方が多いと思うのですが、未成年が美容整形などの美容医療を申し込む場合、親権者の同意が必要です。医療機関によって、親権者の同伴と同意書を必要としていたり、親権者の電話確認と同意書を必要としていたり、16歳未満は親権者の同伴と同意書が必要だが16歳から20歳未満は同意書だけ必要としていたり、色々なルールがあります。


何故医療機関によってばらばらなのでしょう?法律上はどういうルールになっているのでしょうか?

 

未成年者()が契約を行う場合は、法定代理人(親権者等)の同意を得る必要があります(民法第5条1項)。未成年者が法定代理人の同意を得ずに行った契約は、未成年者本人や法定代理人が取り消すことができます(同法第5条2項)。

契約が取り消されると、代金を支払う義務はなくなり、既に代金を支払っている場合は返金を請求できます。サービスを既に受けていたとしても、返金しなければなりません。また、商品等を受け取っている場合は現状のまま返品し、使用料を支払う義務はありません。


※未成年とは20歳未満を指しますが、2022年4月1日から成年年齢が18歳に引き下げられますので、未成年は18歳未満になります。


ただし、これには例外もあり、以下の場合は契約を取り消すことができません。

  1. 小遣いや仕送りなどの範囲内で行った契約

  2. 結婚している未成年者が行った契約

  3. 営業している未成年者が、その営業に関して行った契約

  4. 「成年者である」「親の同意を得ている」などと偽った場合

  5. 成人に達してから商品やサービスを受けたり、代金を支払った場合

  6. 未成年者が成人に達してから5年を経過した場合


改めて美容整形の話に戻ると、医療機関によりルールが異なるのは、法律上未成年者と医療行為提供の契約をするのには親権者の同意が必要ということは前提とした上で、医療機関により、どのように「親権者の同意」を確認するかが違うからです。法律的には、全ての未成年について親権者同伴というルールにすれば、一番確実に「親権者の同意」が取れますので、後から取消しをされるリスクはなくなり、一番確実な方法とはいえます。しかしながら、そうすると、未成年にとっては面倒な場合もあります。例えば、青森から東京の大学に出て来た19歳の大学生が東京でニキビ治療をする場合にも、青森から親を呼ばなければならなくなってしまいます。これは集客に関するデメリットになりえます。したがって、各医療機関によって、取消しのリスクをなくしつつ、集客もできるよう、同伴は18歳未満だけにしたり、親権者と電話確認をすることにしたり、18歳以上でも高校生の場合は親権者の同伴が必要としたり、色々なルールを作っているのです。


私も、どのようなルールが一番いいかと聞かれることがあるのですが、これについて絶対的な正解はなく、クリニックと話し合いながら、ルールを作ることになります。取消しやクレーム防止のリスクを重視するのか、集客の容易さを重視するのか、これにより取るべき手段は変ってきます。


 

それでは、美容医療クリニック以外の、美容室、まつげエクステンションサロン、ネイルサロンの場合には、同意をとる必要はないのでしょうか?


法律的には、これらについても、親権者の同意は原則必要です。民法はどの業態にも平等に適用されます。現状としては、まつげエクステンションについては同意書を取っているサロンも一定以上あるとおもいます。美容室やネイルでは、同意書を求めないケースも多いかもしれません。


親権者の同意を求めない場合には、上記の同意の例外のうち「小遣いや仕送りなどの範囲内で行った契約」に該当するという解釈で、親権者の同意を不要としています。ただし、これがあくまでも例外で、原則は親権者の同意が必要ですので、一定のリスクはあります。例えば、女子高生がカラーリングを希望したので施術したところ、校則で禁止されており、親の同意も得ていなかったので、親からサロンに苦情が入り、全額返金した上で、無料で黒髪に戻した、というケースがあります。こういうケースを避けたい場合には、やはり親権者の同意を得るべきです。


先程の美容整形の話同様、親権者の同意を求めるか、どのケースなら求めるか(例えば、カットは求めないが、カラーやパーマは求めるなど)は、最終的にはサロンの判断です。法的には全て求めるのが一番安全ですが、集客とのバランスもあるので、合理的な塩梅を見つける必要があります。


一つの考え方としては、身体的なダメージがありえるもの、親権者からのクレームが想定されるものに付いては、同意をとった方が安心です。美容整形は基本的にこれに該当しますし、まつげエクステンションも、目の周りの施術なのでこれに該当すると思います。美容室とネイルは、これよりはリスクが低いと思われますが、高校生以下の場合には校則違反等の理由で親権者からのクレームがあり得るので、単純なカット以外、特に高額な施術の場合には、同意があった方が安心であると思います。


皆さんも自分のクリニックやサロンのルールが合理的にできているか、見直してみてください。

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