契約書のタイトルを「契約書」「覚書」「合意書」「確認書」など、どれにしたらいいですかと聞かれることがあります。結論的には、どのタイトルにしても法的効果は同じです。「契約書」は法的効果が強く、「覚書」はなんとなく緩い、というイメージをお持ちの方もいますが、これは誤りです。そもそも、契約書に何というタイトルを付けなければいけないのかというルールはありません。極端な話、アパートの賃貸借契約書に、「売買契約書」というタイトルがついていたとしても、中身がアパートの賃貸借に関する話であれば、これは賃貸借契約です。「売買契約書と大きく書いてあるのにおかしい!」と思われるかもしれませんが、どんな契約がされたかは契約書の中身を見て判断します。タイトルは関係ありません。
もう1つ、美容業界の方に特に注意していただきたいのは 「申込書」です。「申込書」は申し込むための事務手続的な書面なので契約ではない、と考えがちですが、これもそうとは限りません。先程の、契約書のタイトルは関係ない、という話を思い出しいてください。「申込書」というタイトルの契約書もあるのです。例えば、私の知る限り、リクルート社の ホットペッパービューティーの契約書は 「申込書」というタイトルだったと思います。しかし、その「申込書」の下の方に、契約条件が小さめの文字で書いてあり、法的には契約書になっていました。契約書である以上、契約条件に、申し込んだコースは途中で変えられないと書いてあれば、変えられませんし、途中解約はできないと書いてあれば、これもできないことになります。
他にも、「申込書」という書面で、ネット広告3か月の無料プランに申し込んだサロンから、4か月後から課金されていることに気付き、やめたいと言ったがやめられないと言われた、どうしたらいいか、と相談を受けたこともありました。このような相談は実はよくあります。この場合でも、その「申込書」には、下の方に契約条件が書いてあり、無料期間中に解約しないと自動契約になること、契約後1年間は解約できないことなどが書かれていました。したがって、法律的には、中途解約は難しいケースでした。なお、契約者が個人であれば、消費者契約法など、消費者を守るルールによって、救われることもあるのですが、美容サロンやクリニックは事業者ですので、この保護は受けられません。
このように、契約書のタイトルは重要でありません。特に、申込書というタイトルでも契約書であることがよくありますので、注意しましょう。油断をせずに、下の方で小さい文字かもしれませんが、書いてある契約条件をきちんと読みましょう。
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