最近自社の化粧品をインターネットを使って外国の消費者向けに販売する事業者が増えています。このような販売形態を「越境EC」といったりします。今回は、化粧品の越境ECを行う際のポイントについて解説します。
1 ターゲットとする国を決めよう
越境ECと一言で言っても、中国、シンガポールなどの特定の国に絞る場合と、世界中を対象にする場合がありますので、どちらでいくのか、まず決めていただく必要があります。これは、どの市場をターゲットに何を売るのかという、マーケティングの意味でも大事ですが、それによって、実務も変わってきます。例えば、決済手段一つとっても、中国なら、中国、シンガポールならシンガポールで使われている決済手段を使うべきですし、全世界対象にするなら、PayPalなど世界的に有名な決済手段にしたほうがいいといえます。また、ローカルモールに出店する場合には現地法人が必要などという場合もあります。グローバルモールだとそういう縛りはないことが通常です。このように、ターゲットを特定の国にするのか、世界中なのかにより、取るべき手段も変わってきますので、漠然と越境ECというのではなく、具体的に考えていただく必要があります。
2 化粧品の輸出入規制を確認しよう
まず、輸出について、国内向けに流通している製品をそのままの形態で輸出する場合は薬機法上特別な手続きは必要ありません。ただし、国内向けに流通している製品のラベル等を変更すること(翻訳も含む)は「化粧品製造」に該当するため、化粧品製造業の許可を得ていないとできません。次に、輸入については、対象国の化粧品輸入規制を調べる必要があります。これは国により様々ですが、例えば、Good Manufacturing Practice(GMP)という証明を要求される場合などがあります。また、日本でいうところの薬機法に相当する規制がある国も多いので、取引先が化粧品輸入に必要なライセンスを有しているかということも確認する必要があります。
3 利用規約をしっかり作ろう
越境ECの場合、配送のミス、関税のトラブル、商品クレームなど、トラブルはどうしても多くなりがちです。これに備え、想定される事柄については、利用規約で予め定めておく必要があります。例えば、よくあるトラブルの一つに、関税の負担があります。売主としては受取人負担だと思っていたけれど、買主としては売主負担だと思っていたようなときにトラブルになります。よって、受取人負担であれば、受取人負担であると利用規約にはっきり記載しておく必要があります。なお、特定の国向けの越境ECであれば、関税の額は予め調べられますので、料金に含めておくと、見え方としてはよりよいかもしれません。
4 準拠法と紛争解決条項に注意しよう
越境ECの場合には、消費者は外国にいるため、何か揉め事になった場合に、どこの法律に基づいて契約を解釈するのか、裁判や仲裁はどこでどう行うのかという問題が必ず出てきます。したがって、例えば、準拠法は日本法、裁判管轄は東京地裁などと規約で決めておく必要があります。
ただし、ここで少し難しいのは、仮にこういう規定があったとしても、実際は機能しないことがあるということです。多くの国には消費者保護のための法律があるので、利用規約等で、日本の裁判所が専属的管轄を有するという規定を置いている場合であっても、国外の消費者が日本の事業者を自国の裁判所で訴えた場合は、そこで裁判ができてしまう可能性があります。準拠法についても同じで、いくら規定で準拠法を日本法と定めても、消費者の国の法律が適用になる可能性があります。
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