ロクシタンの米国法人が経営破たんしたとの報道がありました。
ロクシタンというと、21歳でフランスのニースに留学した時、ニースのお店で初めてその存在を知り、当時日本の化粧品にはなかったような自然で独特のいい香りに感動したのを今でも覚えています。ロクシタンの製品を使うと、南仏の空気感が感じられるようで、気持ちがいいですよね。
フランスの化粧品企業、ロクシタングループ(GROUP L'OCCITANE)の米国法人であるロクシタンU.S.(L'OCCITANE U.S.)は26日、日本の民事再生法に当たる米連邦破産法第11条の適用をニュージャージー州の破産裁判所に申請した。新型コロナウイルスの影響で、実店舗の1割強を閉店する見込みだ。
リージョナル・マネジング・ディレクターのヤン・タニーニ(Yann Tanini)は裁判所に提出する書類の中で「パンデミック前から実店舗の売り上げは落ちており、コロナが業績悪化にさらに追い討ちをかけた」と記している。同社は実店舗の閉店やリースの解約をめぐり地主との交渉を進めていたが、難航したことが破たんにつながったという。今後23店舗のリース解約を行う予定だ。
2021年1月28日「追記:ロクシタンの米国法人が破産法申請 日本事業は継続」より引用
WWD JAPAN, ALLISON COLLINS 訳 北坂映梨
さて、上記記事にもありますが、ロクシタン米国法人が申請したのは、米連邦破産法第11条、いわゆる「チャプターイレブン」というもので 日本の民事再生法にあたります。破産というと、会社がなくなるようなイメージだと思いますが、民事再生は、その名前のとおり、会社の再生を目指す手続です。したがって、会社はなくなりません。例えば、アメリカのユナイテッド航空は2002年にチャプターイレブンを申請しましたが、今もユナイテッド航空は存在しています(2010年にコンチネンタル航空と合併はしています)。今回のロクシタン米国法人も、チャプターイレブンを申請しましたが、これにより米国国内の店舗が必ずしも全て閉店するわけではなく、一部閉店も含めコストを削減しつつ、再生を図ることになります。なお、米国法人と日本法人であるロクシタンジャポンとは資本関係がないため、日本の事業には影響はありません。つまり、これにより日本にあるロクシタンの店舗が閉まったり、ロクシタンの商品が日本のオンラインサイトで買えなくなることはありません。
破産と民事再生の違い ※日本法を前提として
破産と民事再生は何が違うのでしょうか。万一自社が経営破たん状況になったらどちらを選択したらいいのでしょうか。
破産は会社がなくなるもの、民事再生はなくらないものです。破産の場合、裁判所の監督のもと、財産は全て処分され、債権者に平等に分配されます。分配後の会社は空っぽになりますので、会社は消滅します。民事再生の場合、業務は継続しながら「再生計画案」を立て、債権者の認可をもらい、再生計画案を実行していきます。再生計画案には、通常は、債務の大半の免除と、リストラ、一部の業務部門の閉鎖、その他の抜本的なコスト削減が含まれます。
こういうと、破産より会社がなくならない民事再生の方がいい!と思われる方も多いと思いますが、民事再生をするためにはいくつか条件があり、どんな会社でもできるわけではありません。一つの条件としては、実行可能な再生計画案を策定できることが必要です。民事再生は、事業を継続して上がる利益から債務を弁済していくようなイメージなので、いくら工夫をしても利益を上げられないような状況のときには、民事再生というオプションは取れません。
また、会社が存続するのは確かによい面はあるのですが、民事再生の場合、何年もかけて会社を立て直していかなければならないので、苦しい道のりになります。破産の場合には、完全にフレッシュスタートが切れるので、こちらの方がよいという価値観もあると思います。
自分が代表を務める会社が破産した場合(この場合は代表者個人も自己破産することが多いです)、自分はどうなってしまうのかと心配される方が多いと思いますが、身ぐるみというはがれて路上生活者になる、ということはないです。自己所有の自宅は手放さなければならないことが多いですが、破産手続き後に取得した財産、99万円までの現金、家財道具等、その他裁判所が認めた財産は保有できます。また、別の会社に就職したり、新たな事業を立ち上げることに制約はありません。また、戸籍などに破産したことが記載されるわけではないので、親戚知人友人などに必ず知られてしまうわけでもありません。
破産と民事再生は一概にどちらがよいと言えるものではないので、実際はケースバイケースで判断すべきですが、まずは、2つの存在と、大きな違いを押さえておきましょう。
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