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執筆者の写真Yuko NITTA

スタッフのミスによる損害をスタッフに賠償請求できるか



スタッフがミスをしてサロンに損害を与えた場合、サロンはスタッフに対して損害の賠償を請求できるでしょうか。例えば、以下のような事例が起こったときに、サロンからスタッフに弁償を要求できるでしょうか。


  • スタッフが、お会計の時に計算を間違えてしまい、お客様から本来よりも少ない額しかもらわなかった

  • スタッフが、施術でミスをしてしまい、サロンがお客様に施術代金を返金した

  • スタッフが商材の注文を間違えてしまい、不必要な商材が大量に届き返品もできない

このようなときに、サロン側から「損害金を給与から天引きしていいですか?」と聞かれることもたまにあるのですが、これは色々な意味でNGです。どうして?と思われた方は、本記事を最後までお読みください。


損害全額の賠償請求は困難


まず、判例上、全額の賠償請求はできないことになっています。事業者は、他人を使用して利益を得ている以上、反面それによって生じた損害も負担しなければならない、と考えられているからです。全額の賠償請求はできないとして、どの程度請求できるのかはケースバイケースになります。ミスの程度が大きかったり頻繁であった場合には、認められる額がより大きくなります。判例上は、「その事業の性格 規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度 その他諸般の事情に照らし損害の公平な分担という見地から信義則上を相当と認められる限度 」において認められるとされています(茨城石炭商事件 最高裁昭和51年7月8日判決)。


以上のとおり、賠償請求をしたい場合でも、全額の賠償請求は難しいということを理解しましょう。それでも可能な範囲で賠償してもらいたいというときには、ミスをしたスタッフと話し合い、双方が納得できる額で、一部の賠償を合意することが現実的な対応ではないかと思います。合意ができた際にその旨の書面を作るべきです。なお、個人的には、ミスにより生じた損害は常にスタッフに請求するというのではなく、反省し次に生かしてもらうほうが、長期的に見るとプラスであることも多いように思います。


損害金の給与天引きは原則違法


次に、損害金を一方的に給与から天引きすることは、違法です。労働基準法には、「全額払いの原則」という、賃金は全額支払わなければならないというルールがあり、これに反してしまいます。ただし、例外的に、天引きについてスタッフの自由な意思による合意があった場合には認められます。このときには、合意の存在を証拠にするために、必ず書面を作成しましょう。無理やり書面を書かされたなどと後から主張されないように、交渉の際の録音をしておくこともよいと思います。


スタッフのミスで損害が生じてしまったときでも、法的に正しい対応をして、知らず知らずのうちに「ブラック企業」にならないように気を付けましょう。


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